A/Dコンバーターはアナログ信号をデジタル信号に変換する回路またはICをいいます。センサーの出力やオーディオ信号の源信号は全てアナログ信号です。
これらをパソコンやマイコンで処理したり数値的な表示を行おうとするとデジタル信号に変換しなければなりません。そんなときにA/D変換を使います
一般的に特殊な場合を除いて設計者はA/D変換回路を設計して装置に組み込むようなことはせずにA/D変換IC、A/DコンバーターICをを使うのが普通です。
ここでは古くからある遂次比較型(SAR)A/Dコンバーターを元にA/Dコンバーターの基本的動作を説明します。
A/Dコンバーターの基本原理

図1
A/Dコンバーターの基本的動作は時間とともに変化するアナログ信号をその周波数より早い周波数(サンプリング周波数と呼びます)で一時的に保持し(標本化またはサンプリングとよびます)
それを数値化(量子化と呼びます)する方法でおこなわれます。
図1は三角波波をA/D変換し、そのデータをD/Aコンバーター(デジタル信号をアナログ信号に変換するICまたは回路)で
アナログ信号に変換した信号と元のアナログ信号を重ね合わせたシンクロスコープの写真です。画像からわかるようにアナログ信号はデジタル化すると階段状になります。
実用回路ではD/A(デジタル-アナログ変換)後にフィルタを挿入し波形をなめらかにします。
--標本化(サンプリング)--

図2
図2は図1の一部を拡大したものです。サンプリングは一定周期で行われます。この周期の周波数をサンプリング周波数と呼びます。
サンプリング周波数は入力信号の最大周波数より2倍以上の周波数でおこないます。逆にいうとサンプリング周波数の1/2以上の周波数の信号はサンプリングが正確に行われないと言うことです。
人間の聴感の最大周波数は20kHzですから、オーディオシステムでは40kHz以上のサンプリング周波数が必要です。オーディオ業界の標準周波数48kHzだそうです。
サンプリング周波数が早いほど再現される波形はなめらかになります。
--量子化(デジタル化)--

図3
図3の画像は三角波のアナログ信号を フルスケール+10V,4ビットのA/Dコンバーター でデジタル変換したものです。
このコンバーターで量子化されたデジタルコードと階段状になっている電圧の関係は図3のようになります。4ビットで表現される数値は 0000 ~ 1111 ですから
分割数でいうと16になります。A/Dコンバーターのフルスケールをこの分割数で除算した電圧がこのコンバーターの最小分解電圧になります。このコンバーターの例でいえば
10÷16=0.625Vになります。A/Dコンバーターの量子化はこの最小分解電圧を基準にして数値化していきます。つまり入力電圧が0.625Vを越えて1.25V以下ならデジタル値は 0001 (十進数 1)
1.25Vを越えて1.875V以下なら 0010 (十進数 2) となるようにデジタル値に変換します。
前述した分割数をA/Dコンバーターの分解能と呼びます。通常A/Dコンバーターの分解能はビット数で表現されます。ビット数と分解能の関係は 2n になります。n はビット数です。
つまり4ビットなら 24=16 、8ビットなら 28=256 となります。
最小分解電圧はLSB(Least Significant Bit)の変化量と言い、LSB 0.625V などと表現します。
4ビットで表現される最大値は 1111 で十進数で15になります。従ってデジタル値 1111 は最小分解電圧0.625Vを15回足した電圧に相当しますから
0.625V×15=9.375Vになり、D/Aコンバーターで出力しても10Vにはなりません。
--A/Dコンバーターの種類--
これまでえ述べてきたことは遂次比較型(SAR)A/Dコンバーターをもとに説明してきましたがA/Dコンバータには変換方式によて幾つかの種類があります。変換方式によってここで説明したサンプリングホールドを使わない方式もあります。
下記はA/Dコンバーターの代表的な変換方式による分類です。
- 遂次比較型
- 二重積分型
- パイプライン型
- フラッシュ型
- Δ∑型