ダイオードが点接触型のゲルマ二ウムダイオードとして登場してからシリコンダイオードへ移行し、各種の接合型が開発され現在に
いたっています。シリコンダイオードの主材料であるシリコンは日本語では珪素といい、地球の主要な構成元素のひとつです。つまり
地球に非常に多く存在する鉱物なのです。俗に「シリコンゴム」とか「シリコン樹脂」のどと言われるものがありますがこちらは
高分子化合物で人工の物質です。そして正確には「シリコーンゴム」、「シリコーン樹脂」と言います。
シリコンダイオードに使われるシリコンは鉱物のシリコン(珪素)を超高純度に精製されたものを使います。その純度は
99.999999999%といわれ、9が11ヶも並ぶことからイレブンナインと呼ばれています。
現在の半導体の主材料はゲルマニウムも使われていますが、ほとんどがシリコンです。ですから最近は単にダイオードといえば
シリコンダイオードのことをいいます。シリコンダイオードを大別すると一般用、高周波用、特定用途に分類されるかと思います。
一般用シリコンダイオード
スイッチング用、検波用等
一般的な電子回路で使われるシリコンダイオードでデータシートでスイッチング用、整流用などとうたってあるものです。
使用周波数は1KHz程度以下で、商用周波数の整流回路に適しています。
高周波用シリコンダイオード
これらはおもにスイッチングレギュレータや高周波回路(周波数が数十KHz以上)等に使われるシリコンダイオードで逆回復特性を改善したダイオードです。
FRD (Fast Recovery Diode)
逆回復時間を改善したシリコンダイオードです。ファーストリカバリダイオードと呼びます。
一般ダイオードの逆回復時間trrは凡そ数十μsec~100μsecですがFRDの逆回復時間は凡そ100nsec以下と非常に高速です。しかし、順方向電圧降下は2Vと一般ダイオードよりも
大きくなっています。このことは5Vなどの低電圧の整流では逆に損失をまねくことになります。
HED (High Effeciency Diode)、LLD (Low Loss Diode)
逆回復時間をFRDよりさらに高めたシリコンダイオードで、逆回復時間は凡そ50nsec以下とFRDの半分以下です。順方向電圧降下はFRDと同じく2V程度です。
SBD (Schottky Barrier Diode)
ショットキーバリアダイオードと呼ばれるこのシリコンダイオードは今まで説明してきたダイオードのようにPN接合の整流原理で動作するのではなく金属と半導体の接触による整流作用を利用したシリコンダイオードです。
動作原理上、PN接合ダイオードの逆回復時間というものはありません。また順方向電圧も0.6V以下と他のダイオードに比べて抜群の性能を示しています。同一電流の定格であれば
最も優秀なシリコンダイオードと言えるでしょう。しかし、現在のところ逆耐圧が100数十ボルト程度と他のシリコンダイオードに比べてあまり高くありません。また価格も他のシリコンダイオードよりも高価です。
特定用途シリコンダイオード
定電圧ダイオード(ツエナーダイオード)
このシリコンダイオードは逆バイアス、すなわち逆方向に電圧を印加して使うシリコンダイオードです。
一般のダイオードは逆バイアスで使うと耐圧を超えた場合は破壊
してしまいますがこのシリコンダイオードは逆方向電圧の降伏領域を超えても破壊せずに安定的に電流をながします。
この特性を利用しておもに定電圧回路に使われます。
定電流ダイオード(CRD---Current Regulative Diose)
定電圧ダイオードとは逆に広い電圧範囲で一定の電流を流せるシリコンダイオードです。
これはFET(電界効果トランジスタ)のチャネル電流がゲート電圧が低い領域では、ゲート電圧に比例してドレイン電流が流れることを利用したダイオードです。すなわちドレイン
電流を検出してゲート電圧としてフィードバックしてやればドレイン電圧が変化しても、電流は常に一定になります。そんなことからこの素子はシリコンダイオードと呼ぶよりFETの一つと
よんでもいいかも知れません。
このダイオードはLEDの駆動には最適でLEDのVfがばらついていても明るさを一定にすることが出来ます。
*LEDのVfは同じ型式のものでもばらつきがあります。
可変容量ダイオード
可変容量ダイオードは一般に「バリキャップ」と呼ばれています。PN接合の接合部の静電容量が逆バイアスで変化することを利用したシリコンダイオードです。
このシリコンダイオードも定電圧ダイオードのように逆バイアスで使います。
PN接合に逆バイアスを印加すると接合部に空乏層ができます。この空乏層は逆電圧の大きさによって変化します、PN接合の静電容量はこの空乏層の大きさでに応じて変化します。
すなわち逆電圧の大きさで静電容量が変化することになります。
PINダイオード
このシリコンダイオードはPN接合の間に真性半導体であるI型半導体を設けてあるものです。
順方向電流の変化によってI型半導体の導電率が変化してあたかも可変抵抗器のように振舞います。この作用は高周波領域で顕著にみられ、高周波回路のスイッチングやOPアンプと
組み合わせ高周波回路のゲインコントロールなどにつかわれます。