図1
オペアンプのオフセットとは入力がゼロのときに出力に現れる電圧(出力オフセット)をいいます。この原因はオペアンプの入力部の差動アンプに起因します。
いくらIC(集積回路)といえど全く特性の同じトランジスタを作ることは出来ません。オフセットは差動アンプのトランジスタ特性のズレによって起こります。
2つの入力トランジスタのベース・エミッタ間の電圧VBE差によって生ずるオフセット分を電圧オフセット、バイアス電流の差によって生ずるオフセット
をオフセット電流とよんでいます。
これらのオフセットは別々に出力に現れるのではなく入力合算されて、増幅回路の場合、増幅率倍されて出力にあらわれます。
データシートではオフセットは入力換算値で表示されそれぞぞれ”入力オフセット電圧”、”入力オフセット電流”と表記されます。
また、オフセットはオペアンプを動作させる為のバイアス電流そのものによっても発生します。
入力でのオフセット
図2
--入力オフセット電圧--
入力オフセット電圧は差動入力の2つのトランジスタTr1、Tr2のVBEの相違によって発生します。入力オフセット電圧[Vos](図2参照)は
1+(Rf/RS)倍されて出力に現れます。
電圧ゲインを大きく稼ぐような使い方を
すると出力に大きく現れます。
--入力オフセット電流--
入力オフセット電流は差動入力の2つのトランジスタのhfeの違いによるバイアス電流の差を言います。図2の回路では入力オフセット電流[Ios]は
帰還抵抗Rfに流れ、Rf・IOSとなって出力にオフセット電圧を発生させます。ですから電圧ゲインの高くない回路でも
Rfに大きな値の抵抗をを使うと出力オフセットは大きくなります。
--バイアス電流によるオフセット--
図2においてRCをオペアンプの非反転端子に接続しないときはRfに流れる電流は入力オフセット電流[IOSではなく
入力バイアス電流[IB]が流れ、Rf・IBとなって出力にオフセット電圧が現れます。
RCはバイアス補償抵抗といい、バイアス電流によるオフセットを打ち消す働きをします。RCの値はRSとRf
の並列合成抵抗値と同じ値の抵抗値を選択します。値が完全に等しくなくても充分な効果が得られます。
バイアス補償抵抗の計算式
ちなみに入力バイアス電流は入力オフセット電流に比べてはるかに大きく、バイアス補償抵抗を接続することで出力オフセットを大幅に軽減できます。
注意:バイアス補償抵抗を接続すると不具合を生ずる応用回路もあります。