MOSトランジスタは電界効果トランジスタの仲間です。正確にはMOSFETと言います。MOSFETとはMetal-Oxide-Semiconductor-Field-Efect-Transistorの頭文字をとったものです。一般的にMOSトランジスタと呼ばれています。
MOSトランジスタはバイポーラトランジスタと同じような動作をしますが原理は全く違います。
MOSトランジスタは電界効果トランジスタですから電圧で制御します。電界効果トランジスタの概略は電界効果トランジスタのページをお読み下さい。
JFETはこちら-->JFETトランジスタ
図1はMOSトランジスタの記号ですがダイオードが並列に接続されています。一般的にこのダイオードは回路図上で記入しません。(メーカーのデータシートの記号は記入されています)これは説明の都合上、記入しています。
このダイオードはMOSトランジスタの寄生ダイオードといわれMOSトランジスタの製造過程で出来てしまうものです。この図をみてわかるようにMOSトランジスタはJFETのようにドレインとソースは逆にしては使えません。
もう一つ、MOSトランジスタを使ううえで大事なことがあります。
バイポーラトランジスタは完全にONした状態ではコレクタ~エミッタ間は流す電流にほとんど無関係に 0.6~1V 程度になりますがMOSトランジスタはオン抵抗というものがあり、MOSトランジスタが完全にオンした状態でもドレイン~ソース間に抵抗成分として存在し電流を妨げる働きをします。ですから流す電流の大きさでMOSトランジスタの消費電力が変わってしまいます。
MOSトランジスタに流す電流とオン抵抗を考慮しておかないと、バイポーラトランジスタを使ったときより消費電力が増え、発熱が大きくなる場合があります。
MOSトランジスタの動作原理
Nチャンネル MOSトランジスタの動作原理を簡単に説明します。
Pチャンネルは極性が逆になるだけで動作原理は同じです。
図2ではMOSトランジスタの断面図です。この状態はゲート~ソース間は0Vです。
ドレインとソースの間はP型半導体が挟まっていますからソースからドレインへ電子の移動はありません。したがってドレイン~ソース間は電流は流れずMOSトランジスタはオフ状態です。
図3ではゲート~ソース間の+ の電圧が印加されています。ゲートに電圧が印加されると、ゲート直下のP型半導体の正孔は内部へ移動していきます。そして逆に電子はゲート側へ引き寄せられます。
さらに電圧を上げていくとこの現象は顕著に進み、引き寄せられた電子によってゲート直下のP型半導体はN型半導体に反転してしまいます。つまりゲート直下に新しくできた
N型半導体によってドレインとソースが接続されたことになります。
これでソースからドレインへ電子の移動が出来るようになり、結果的にドレインからソースへ電流が流れるようになりMOSトランジスタはON状態になります
そして、この新しく形成されたN型半導体(Nチャンネル)はゲート~ソース間の電圧の大きさで厚さが変わります。つまりゲート~ソース間の電圧が高ければ新しく出来たNチャンネルの厚さは厚くなり、ドレインとソースをつなぐ道幅が大きくなりより多くの電子がドレイン側へ移動できるようになります。
図3はNチャンネルMOSトランジスタの特性図です。バイポーラトランジスタと似ていますがMOSトランジスタがONし始める電圧(データシートでは [Vth] 又は [VGS(off)]で記述されています)
はそれぞれのMOSトランジスタで違います。実際に使うときはデータシートを見るようにしましょう。
MOSトランジスタの取り扱い上の注意点
ゲートの入力抵抗は非常に高く、静電気によってゲートの絶縁層が敗れてしまい物理的にMOSトランジスタが破壊に至る場合があります。
取り扱いには充分気を付けましょう。